【曲目】
1. J.S.バッハ: プレリュード ホ長調 BWV854 ~ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集より
2. シューベルト: 即興曲 変ト長調 D899-3 Op.90-3
3. チャイコフスキー: 舟歌 ~四季 Op.37b より
4. ウェーバー: 舞踏への勧誘 Op.65
5. ドビュッシー: 亜麻色の髪の乙女
6. ショパン: ノクターン 嬰ハ短調 遺作(レント・コン・グラン・エスプレッショーネ)
7. ショパン: 幻想即興曲 Op.66
8. モーツァルト: アダージョ ロ短調 KV540
9. シューマン: トロイメライ ~子供の情景 Op.15 より
10-12. ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 Op.27-2「月光」
13. グリーク: 感謝 Op.62-2 ~抒情小曲集より
ピアノ:髙橋 望(スタインウェイ)
解説:池田卓夫、髙橋 望
録音データ:2008年5月 秩父ミューズパーク音楽堂
レーベル:ALM records ALCD9081
発売元:コジマ録音
●CD新譜ピックアップ~ぶらあぼ 2008年11月号 下田幸二氏
まず、バッハのプレリュードから始まる美しいアルバム。弾いているのは髙橋望。武蔵野音大、ドレスデン音大で学び、園田高弘賞コンクール第3位などに入賞している。特筆すべきは、今再び日本でもたいそう話題のペーター・レーゼルに師事していることである。師匠ゆずりなのか、たどってきた道筋からなのか、気品ある演奏だ。シューベルトの即興曲では、随所に素敵なルバートでたゆとう和声をまろやかに表現し、ウェーバー「舞踏への勧誘」は憧れにあふれている。アルバムタイトルのシューマン「トロイメライ」はまさに夢のよう。ベートーヴェン「月光」もよい。
●新譜月評~レコード芸術2008年11月号
濱田滋郎氏
準推薦 なぜか終わりから2番目という目立たぬあたりに<月光ソナタ>の全3楽章を置いているが、あとはおおむね「小品」と呼ばれる規模の楽曲を揃えたピアノ・アルバム。時にはアマチュアも手を出して弾きたがるような、古典派からロマン派にかけての周知の名曲を揃えており、一見したところでは、人気取りを目当てにしたポピュラー・リサイタルのようにも見える。しかし、ここにCDデビューを果たしたペーター・レーゼル門下のピアニスト、髙橋望の演奏を聴いてゆくにつれ、ここにあるのはけっして大向こうをうかがった‘うらんかな‘の姿勢などではなく、むしろ自身の内側と真摯に向き合った求道の眼差しだと感じ取れる。同時にそれは閉ざされたものではなく、言うならば、丹精こめて枝張りをととのえ咲かせた花鉢を、心ある人たちに見てほしいと、つつましく並べる人の心境を思わせる。だからこそ、表題に選ばれている<トロイメライ>のみならず、バッハ、シューベルト、チャイコフスキー、ドビュッシー、ショパン、モーツァルト・・・曲目のひとつひとつが、しみじみと聴きての胸に通う何かを湛えている。くだんの<月光ソナタ>にしても同じことで、楽章それぞれに気持ちが込められているのを聴く。結びにグリークの《抒情小曲集》中、<感謝>を題された1曲が置かれたのも、おそらく浅からぬ意味合いをこめてのことであろう。申し遅れたが、近頃はなぜか昔のようにひんぱんには弾かれ(聴かれ)ないウェーバー<舞踏への勧誘(招待)>が入っているのを、喜ぶ方もあろう。
●今月の優秀録音~ステレオ2008年11月号
斎藤宏嗣氏
新進気鋭のピアニスト、髙橋望の『トロイメライ』は、バッハ、シューベルト、チャイコフスキー、モーツァルトからドビュッシーまで、よく知られる名曲を綴った珠玉の一枚。録音は08年5月、埼玉県の秩父ミューズパーク音楽堂。艶やかでクリーンなピアノ音像を豊かな音場空間が包み込む。音像からのエコー離れもよく、爽快な響きが聴感に快い。